肛門科について
日本では、3人に1人が痔になったことがあるとされています。生活習慣によって再発するケースも多いため、再発予防を含めた専門的な治療を受けることが重要です。また、痔と同じような症状を起こす直腸がんや肛門がんなどの病気もありますので、症状があった場合はできるだけ早く受診するようおすすめしています。
当院では、問診の他に、医療用麻酔ゼリーを使って痛みや不快感を最小限にした指診・肛門鏡検査などを行って診断しています。プライバシーを重視した診療を行っていますので、安心していらしてください。
肛門疾患に多くみられる症状
肛門のふくらみ・出っ張り
外痔核、脱出した内痔核、肛門ポリープ、直腸が脱出する直腸脱、大腸ポリープなどの可能性があります。なお、大腸ポリープの場合、放置していると大腸がんに進行する可能性がありますがポリープの段階で切除することで大腸がん予防につながります。早めに受診してください。
肛門からの出血
いぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸がんなどの可能性があります。排便後、紙に付着する場合は切れ痔の可能性が高く、内痔核の出血では排便時にかなり大量に出血することがあります。血便なども痔疾患によって起こりますが、大腸疾患によって起こっていることも珍しくないため早急な検査が必要です。
肛門の痛み
切れ痔(裂肛)、嵌頓(かんとん)痔核、血栓性外痔核、肛門周囲膿瘍などが疑われます。早急な治療が必要な場合もありますので早めに受診してください。
肛門のかゆみ
肛門周囲皮膚炎、真菌(カビ)感染の可能性があります。真菌は、カンジダ菌や水虫と同じ白癬(はくせん)菌などの感染が多く、一般的な細菌感染の治療によって悪化してしまうこともあります。原因を確かめた上で適切な治療を受けるためにも、受診をおすすめします。
肛門の主な病気
肛門ポリープ
肛門は歯状線という部分で皮膚と粘膜に分かれています。肛門ポリープは、この歯状線にある細長いデコボコが並んだ肛門乳頭に肥厚やしこりを生じている状態です。排便時の出血や脱出など、内痔核に似た症状を起こします。残便感や常に排便したい感覚、かぶれやかゆみを起こすこともあります。大腸ポリープのようにがん化することはありませんが、鑑別のためにもこうした症状があった場合は早めに受診してください。
痔があると慢性的な刺激を受けて肛門ポリープを合併しやすくなっています。他にも、炎症や下痢・便秘などによって発症することもあります。肛門ポリープは自然治癒することはなく、治療には切除が必要です。
肛門皮垂
肛門が一時的に腫れてそれが解消し、伸びてしまった皮膚だけが残って垂れ下がっている状態です。自然治癒することはなく、軟膏などの保存療法でも治すことはできませんので、解消するためには切除が必要です。
肛門周囲皮膚炎
肛門周囲の皮膚が炎症を起こしている状態です。アレルギー性疾患、真菌感染、いぼ痔・切れ痔、ポリープ・肛門皮垂などが主な原因ですが、最近は洗浄をし過ぎて皮膚の正常なバリア機能が失われて皮膚炎を起こしていることも増えてきています。真菌感染によって起こっている場合は通常の治療が逆効果になるため、検査を行って状態に合わせた治療を行います。なお、清潔を保つことは重要ですが、過度な手入れをしないよう心がけてください。
痔核(いぼ痔)について
過度のいきみや冷えなどによって肛門周辺の血流が悪化してうっ血し、静脈がふくらんだ状態です。皮膚部分にできる外痔核、歯状線より内側の粘膜にできる内痔核に分けられ、それぞれ症状や治療法が異なります。外痔核の主な症状は肛門周囲の腫れと痛みがあり、内痔核では排便時の出血や脱出があります。
内痔核
外痔核
保存療法と手術療法があり、経口薬、軟膏、坐薬などによる保存療法で治せるケースも多いため、早めにご相談ください。また、以前は手術が必要だった内痔核でも、現在は注射による治療によって治せるケースも増えてきています。痛みが強い場合などでは手術が必要になることもあります。過度のいきみなど生活習慣によって発症するため、再発させないための規則正しい排便習慣、食生活改善、運動習慣なども重要になってきます。また、足腰を冷やさないよう注意してください。
切れ痔(裂肛)(急性・慢性)
痔ろう
肛門科診療の流れ
1問診
2視診と指診
診察台で横向きになって軽く膝を曲げます。脱衣の必要はなく、下着をおしりが見える程度まで下げていただいて、大判のタオルをかけたら準備完了です。必要な分だけ医師がタオルをめくって診察します。
しこりやポリープ、狭窄などの有無を調べる指診では、ゴム手袋に医療用の麻酔ゼリーをたっぷり塗るため、ほとんど痛みや不快感なく診察できます。。
3肛門鏡検査
筒状の肛門鏡に医療用麻酔ゼリーをたっぷり塗って挿入し、内部を確認します。場合によっては、後日、大腸内視鏡検査が必要になる場合もあります。
4診断と説明
現在の状態や可能な治療についてわかりやすくご説明しています。今後の治療方針について患者様とご相談しながら決めていき、ご納得いただいた治療を行います。